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第4章 大気大循環と波候*

海洋波浪は海上風により発生発達する。海上風は台風、低気圧、前線、北東気流、季節風等の気象擾乱に伴い、その風速や風域、継続時間は気象擾乱の特性に依存する。これら気象擾乱の勢力や持続性は、大気の立体構造と深く結びついていることが知られている。例えば、冬季、極域からシベリア大陸上空に寒気が流れ出すと、上空500hPa高度(約5500m)の谷の前面(東)に位置する千島列島沖では低気圧が発達し、西高東低の気圧傾度が大きくなり季節風が強まる。また、梅雨時期、オホーツク海付近に背の高いブロッキング高気圧が形成されるとこれが長期間継続し、梅雨前線の活動が活発化して低気圧が日本付近で頻繁に発生し、悪天候が続くことが知られている。
このように地上の気象擾乱は立体構造を持ち、上層の寒気や気圧配置、および偏西風の経路等と密接に関連することが知られている。従って、海洋波浪の長期統計(波候)の変動は、上層の大気循環特性に大きく依存するものと考えられる。
この章では、海洋波浪の月平均波高に着目し、500hPa高度、東西循環指数、赤道域の海面水温等との統計的関係を明らかにすることを目的とする。さらに、数値予報モデルあるいは気候モデルとこれらの統計関係を結びつけた波浪の長期予測手法を提案する。

4.1 ブロッキング現象

地上の天気図に見られる高気圧・低気圧は上層の流れに乗って北東方向に進むのが普通だが、上層大気の流れが東西方向から大きく偏倚して、南北方向の大きな振幅を持った蛇行流になると、地上の気圧系は停滞、もしくは変則的なコースをとり、その正常な進路がブロックされる。このようなとき低気圧は、北から北西に進む場合もあれば、停滞する場合、、なかにはUターンする場合がある。このように、上層大気の環流の正常な流れからの大きな偏倚によって、地上の気圧系の動きが変則的なもの
*)執筆者 岡田弘三、宇都宮好博

 

 

 

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